大学1年の授業(7)「道徳哲学 philosophie morale 」で習ったこと


この教科では、メルロ=ポンティ、サルトル、カント、フィヒテ、ヘーゲル、ニーチェについて「自由」とは何かというテーマで習いました。いやいやこれは辛かった。「わかんない」を連発、主な理由は下の4つでした。

1 教科名がわかんない


教科名philosophie moraleについて、小学館ロベール仏和大辞典の"philosophie"の欄にこうあります。
7(古)(観察学histoire、詩poésieを除く)学問、知識   ▶︎philosophie morale 人文科学:今日のsciences humainesに相当する」
 でも、扱ったのは哲学系の有名どころです。今で言う人文科学じゃない気がします。哲学だったらphilosophieだけで済みそうなので、なんでmoraleという単語をあえてつけているんだろう???仏和辞典でもうまく表しきれていないのでスッと私の中に落ちてきません。
moralを前述の仏和辞書で引けば、
「道徳的な、倫理上の、道義に関わる、精神的な、」
などと訳されています。
道徳哲学、倫理学、哲学、どう理解すればいいのとわからなくなりました。

哲学がわかんない

自分の性格として、実験や実証できない事象を把握するのが不得手です。
個人個人が生きるとは何か、考えるとは何かというような哲学的なことを述べることをしても、哲学者とはどういう意味で哲学者になるのかをまったく知らないまま授業に入ってしましました。
一応、この授業のために日本語で比較的わかりやすく紹介したコンテンツを見て理解しようとは努めました。


哲学を日本語で理解しようとしてもわからない

フランス語で習ってるのだからフランス語で理解すればいいじゃんと思う方もいるかもしれません。しかし、私の場合はフランス語で聞いて、脳裏に焼き付ける(ノートにメモするとき)には日本語を使わないと理解に繋がりません。
なので、日本語で哲学者のことを理解しようとインターネットをチェックするんですが、哲学用語が日本語でもわかりません。
歴史と同様、インターネット上で日本語で教えてもらえないかと検索し、読んでみても日本語がわかりにくいです。
弁証法、現象学、コペルニクス的転回、実践理性、観念論、永遠回帰などのキーワードが出てくるんですが、普段目にしたことがないのでちんぷんかんぷんでした。

4 担当教授の教え方(切り口)がユニークでわからない

 担当の先生は、哲学を教えることに情熱があり、2時間の講義でかなりの体力を消耗するんだろうなというほど力を込めます。転んだりしない江頭250のようなテンションです。最初の頃は先生の方を向いてしまうとハイテンションでプッと笑ってしまうほどでした。
この授業は哲学者が考える「自由(liberté)」について4つの特徴があると教えていました。ouiと言う肯定的な自由(La liberté de dire oui)、nonと言う否定的な自由(La liberté de dire non)、身を任せてしまう自由(La liberté de pouvoir se laisser affecter)、与え合う自由(La liberté de pouvoir se donner )です。
授業中何度「自由」と言う言葉を使うことか。日本語の倫理・哲学の説明は(大学、検定試験)受験という枠組みがあり、キーワードが出てそこを説明するイメージがありましたが、この先生は「自由」という主人公的表現が先で、受験的なキーワードは「自由」を理解するために補助的に出てくるようでした。
先生はスライドと分厚いシラバスを教材として提供しているのですが、スライドは文章のみで視覚で理解はしにくく、シラバスは500ページを超え授業の内容よりも詳しすぎて読む余裕もなくて(そもそもを知らない私が)理解の助けになるものではなかったです。



どうしようもないわからなさ、どう手をつけていいのか途方にくれました。

そんな時、イースター休暇前の授業で、「休暇前に質問があれば、日に○○教室で待っています」と言っていたので、相談に行きました。
授業を聞いているけど、上の理由13があって、理解しようとしたいのだけど本当にわからない(化学を習っていない人に化学記号を見せているようだ)、フランス語もmoi(私)とかchose(英語のthing)といった簡単な単語でも解釈が難しいのでわからないと正直に言いました。
先生は「どうしよう、じゃ、カントの哲学言ってみて。(わかんない)あーー、困ったなぁ。今から一人の前で8時間分の授業はできないし。あーー、うーー、どうしたらいいか先生もわからない。」と真剣に悩んでました。
結局、分厚いシラバスの太字部分だけを拾って読んでみたらどうかというアドバイスをいただきました。

以降、廊下で先生とすれ違うと、ça va?(こんにちは、大丈夫ですか)と声をかけられるようになりました。話をしてからは、ダメだーーって気持ちだけから、ピンポイントで哲学者の言っていることに同意できるときがあると(試験で書けるかはともかく)面白いと感じるようになりました。

試験ですが、教科の中で最長の4時間筆記、択一問題なし4問で、カントの哲学を述べよ、あるテーマについて2人の哲学者の比較をしなさいというような設問でした。カント哲学については、分量は裏面まで行くようにしてと先生が言ったので、裏面に単語を1つ書いてネタがつきました。
試験ダメだったと覚悟していたのですが、ギリギリ合格で超ラッキーでした。

哲学って、授業と切り離して偉人の考えを知るという意味ではためになる意味では受けて良かったと思う授業でした。