先に本を読んでから映画を観た感想ですが、瀧と三葉が会えない・会いたいという感情の部分は本が良く、面白い部分は映像の方が良かったです。きっと、面白さはスピード感や直感も大切で、私はそこまで本を読むのが早くないからかもしれません。
映画を観る前、RADWIMPSのことは全く知らず、「前前前世」の歌はYoutube経由で何度も聞いていたので、彼らのこの激しいテンポでストーリーが続くのかとおもいきや、ポイントを押さえたところで挿入歌が流れ、「前前前世」は二人の入れ替わりがわかってこれからどうなる???という場面でのみ入ってきて、適材適所の音楽だったです。
映像美は評判通り、一瞬音も映像も途切れる「間」の入れ方は独特で、黒い画面でハッとさせられます。
もしフランス語版で改めてブリュッセル近郊で上映されたら、義理の家族や子供の友達を誘って観に行って反応を観てみたいです。
この映画を見て、わたしのひとり自由研究であるベルギーの公共交通機関のことを思いながら、同じような作品がベルギー(のフランス語圏)で作られないであろう理由をいろいろと考えてみました。
中高校生が通学で国鉄(鉄道)を使う人が日本よりは少ない
「君の名は。」が描く日本の高校生の日常では、電車がとても身近なものとしてとらえられていました。東京でも、飛騨でも電車が描かれており、東京の電車は瀧と三葉が出会う場所として重要な役割を果たしています。
ベルギーで中高校生(ベルギーフランス語圏は、セカンダリースクール(école secondaire)という中高6年制です)は国鉄を使って通学という風景はあまり見かけませんでした。私が大学通学時に乗っていた時間帯が少し遅かったからかもしれません。ベルギーの中高校生は私服で通うので、大学生なのか中高校生なのか区別がつかないということも考えられます。
それに、中高校に入るには受験ではなく親が自由に決めるという建前です(ベルギー憲法第24条第1項に、教育の自由と、親の教育選択の自由を共同体(政府)が確保することが明記されています。)。受験はなく、学校のオープンデーに行って様子を見たりして希望する学校をリストアップします。そして行政が親の希望と小学校や住居からの距離などの指標を使って学校を決めることになります。
そのため、日本のように行きたい学校まで遠くても通うということが比較的少なくなります。よって、電車で長時間乗ることもすくなく、鉄道駅の近くに学校を建設する理由もなく、どちらかというと夕方になるとトラムやバスに中高校生があふれる光景が見られます。
ベルギー独自でドラマを作るなら・・・コスパの問題
ベルギー仏語圏は約400万人です。ベルギー独自のテレビ局はRTBFというNHKに近い公共放送と、RTB TVIという民放の2局ですが、昔からケーブルテレビ利用者が多く、フランスのクイズ番組やドキュメンタリー番組などにベルギー人が出ていることはよくあります。テレビドラマもフランスで制作したものを使えば製作費がかかりません。
そのような中でProduced in Belgiumのドラマなり映画を作るのに、ターゲットをベルギーの中高校生を主人公にした作品に絞ったら、コスパの観点からシナリオから作るというのは難しい気がします。
日常のモノを忠実にアニメ・マンガにするのが好きなのは日本?
ストーリーはファンタジーな要素も多分にありますが、展開されるのは高校生の日常を舞台にしていて、彼らが通学手段として使う電車や自転車をはじめ、都会の街並み、学生バイトのレストラン、自動販売機、といった素材は実際の物・場所からかなり引用しています。そのため聖地巡礼を行えます。
同じようなことが外国で作られたアニメ・マンガにあるでしょうか。例えばTGVをアニメで描くといったことです。私の狭い知識ではパッと出てきません。それにアニメよりもCGで忠実に作る方に向いているような気もします。
私はストーリーものを理解するのが不得手で、映像作品、マンガの知識が限定されているため、個人的にここまでの理解で停まっているのかもしれません。