ひとり自由研究:SNCB遅延を探るテレビニュース

12月18日の19:30から放映されたRTBFニュースのスキャンというコーナーで、SNCBの遅延に関する特集「#LeScan : les navetteurs décrivent "l'enfer" des retards de la SNCB(訳すと、通勤・通学客がSNCBの遅延を地獄と表す)」を放映していました。

RTBF特集の内容


鉄道を利用している人なら、必ず電車遅延問題に苦労していることでしょう。この「災害」を果敢に評価している人がいます。

通勤客で作る協会と鉄道組合はインフラへ投資を不十分としている政界を糾弾し、遅延を予測するよりも遅延被害を受けるしかない鉄道管理企業を批判している。

鉄道の利用経路は常に遅延しているのは確かである。路線の運営、職業と個人の生活、健康、そして道徳が関係している。

では、鉄道遅延の責任は誰にあるのだろうか?サービス向上をどうしたらいいのか。#LeScanで掘り下げます。

ナミュール・ブリュッセル間の10本中3本は定時発車


ベテラン通勤客のGianni Tabonneさんの電車の定時発車についての考えは決まっています。「悲惨に尽きる。2017年はかなり悪化した。電車利用者は別のことを期待する権利がある。名誉なことじゃないね。」

リエージュ・ギユマン駅のホームでは、ブリュッセル方面へ2本の電車が発車を待っている。しかし、Ansの勾配地点では、機関車が故障中。機関車が復旧するのを待つしかなかった。通勤ラッシュの時間帯に、このような災難が立て続けに利用客に降りかかってくることがある。
乗客はどの電車が先に発車するのかを探し出し、飛び乗る。ホームにいる職員はイライラする。放送では「25分の遅延となっております。ご迷惑をおかけしています。」と言い訳を吐き出している。
車内では乗客が怒りと諦めの間でためらっている。「毎日5分から10分遅れてるよ」と望みのないコメントを前述の男性がした。女性はため息をついて「SNCBと政府を恨むよ」とも。別の乗客も「やつらは営業実績に満足しているんだ。日々お客がどんな仕打ちを受けているのか意識なんてこれっぽっちもないんだよ」続いた。

Navetteur.be協会(注:navetteurは通勤・通学客の意味)は、毎日定時発車率の統計を取得するために記録をとっている。SNCBのウェブサイトからダウンロードできる遅延証明書を編纂している。「今年の結果は悪化している。ナミュール・ブリュッセル間はラッシュ時には10本中3本しか時間通りではない。それが誰にも迷惑かけていないような雰囲気だ。私たちは通勤地獄に生きているよ。」とTabonneさん(Navetteur.be協会会長)は言う。取材のこの日はブリュッセル中央駅に41分の遅れで到着した。

自分の責任を認めることが一般化している


インフラベル(鉄道インフラの国営企業)にとって、6分までの遅延電車は定刻運行と見なされることは知るに値するだろう。鉄道管理側は、利用者とは全く違った定刻運行の評価をしている。
インフラベルのフレデリック・サクレ広報担当によれば、定時発車率は87〜88%となっている。
公式には88%の電車が時間通りであり、navetteurがラッシュ時間帯は良くて60〜70%と見ている。これにはインフラベルは週末は祝日も統計に含めていることを補足しなければならない。サクレ広報担当「平均の原則です。時間通りの電車もあれば、遅れる電車もあります。」

良くしていかなければ。


数字の不一致は自分の責任を認めることを妨げない。「曖昧さは全くない。定時発車率は良くない。改善していかなければ」とインフラベル広報担当は結論づけた。
信号故障、架線切断、車体故障、車掌の病気、爆弾警告、自殺と言ったように遅延理由は沢山あるが、遅延理由の24%はインフラベル、30%がSNCB、42%が第三者という結果がインフラベルから発表されている。
SNCBのチエリー・ネイ広報担当は詳細を述べた。「第三者の中には、線路上で犬の散歩をする男の子、線路をノルウェー式ウォーキングをするといった例もあった。線路に木や家畜がいたケースでは、運転手が停止しなければならない。」
50%を超える理由が鉄道関連企業に起因している。SNCB自身も遅延の責任を否定はしていない。

そのため、同社の車両基地では、70年代の古い設備からよりパフォーマンスの高い機材に変えていく努力をしている。測定装置の導入だ。少しづつSNCBは機材の弱点や故障を「予測メンテナンス」する時代に入っている。しかし現時点では10本の車両のうち8本にその最新技術は導入されていない。

まずは鉄道労働者へ圧力をかける


フランソワ・ベロ移動・交通大臣は、鉄道予算を削減することを糾弾している組合には気に入られない調書を作成した。「20%のケースで電車は遅延している。保線区から出庫するまえからである。そこは職員にさらなる厳格さを求めたい」
そして、大臣はnavetteurの統計に「定時発車率が30%という路線を私は知らない。それは嘘だ。」と異議を唱えた。

しかし、鉄道運営企業双方は定時運行率の公式数値をnavetteurに提供することを拒否している。利用者がインフラベルとSNCBが何か隠しているのではないかと考えるのも無理はないかもしれない。

私は思う。「遅延をブーブー言う」のを断ち切る方法を誰が考えているのか。

この特集では、乗客、鉄道会社(インフラベル、SNCB)、乗客協会、大臣というアクターが出てそれぞれの事情を主張しています。
この特集を企画したテレビ局も含めて、みんなブーブーばっかり言って、悪い鎖を断ち切るすべは誰も出していないというのが私の意見です。
日本の首都圏のラッシュ時の混雑はベルギーの比ではありません。それに、日本だって電車は遅延します。ベルギーと日本の電車遅延を経験した身として、ベルギーの遅延はなにが違うのかを分析したいと思ってひとり自由研究しています。

まず、乗客と第一線で働く職員との間で乗客の求めることを吸い上げるという動きがありません。大きな駅でホームには、朝のラッシュ時の信号を出す職員以外、見かける駅員はこれから車掌として電車を待つ職員のみです。彼らの態度は、担当車両に乗る前だからホームでは休憩をしているように感じます。日本はホームにいる職員は、制服を着ている以上仕事という態度を取ります。
じつは、今SNCBの事業報告を訳しているところですが、乗客のニーズを吸い取る手段として、アンケートや調査を実施していると書いています。乗客のニーズはごく一部が参加するアンケートではなく、乗客と接する職員が直接受けることも大切です。そこをどう鉄道会社内で行なっているのかが伝わって着ません。

次に、SNCBの広報担当が言っていた、路線で犬の散歩やウォーキングをする人がいるからと、鉄道会社以外の人のマナーの悪さを引き合いにしています。最新式の鉄道車両を導入して数日後にスプレーペンキで落書きされたという記事も見たことがあります(詳しくはブログでお伝えできればと思っています。)。遅延の責任の一部がSNCBにあると認めたのは評価しなければなりませんが、その次に社外の理由、それもマナーの悪い人のせいで送れんだというような、責任転嫁的な説明の方法が来て、そこで止まっています。SNCBとしてどんな対策を取りたいのか、取っているのかといった、遅延に対しやっていることは述べません。マナーが悪いなら、それをこのような言い訳合戦の取材で告発するのではなく、ポスターなどで啓発する対策などを取り、対処法を明示して欲しいです。

ベルギーではそれぞれが自分の意見を言えるということは素晴らしいことですが、表現するだけ、愚痴るだけで、そこからどうしていけばいいのかを探すのは、時間的に追われる状況にならない限り始まらないような印象を受けます(541日内閣が成立しなかった理由もこんな感じです。)。

遅延率改善、来年は頑張って欲しいです。