日本とベルギーのニュース比較:12月20日

前回のブログ「ひとり自由研究:SNCB遅延を探るテレビニュース」で、ベルギー国鉄(SNCB)が遅れることのニュースについて触れました。

翌朝、日本のテレビ朝日系ニュースを24時間放送している「JapaNews24」をみたら、日本の鉄道に関する2つのニュースが流れました。別の報道機関の記事ですが、概要を知るためにリンクをつけます。




ベルギーと日本の鉄道関連ニュースを聞いて、日本の上記のタイプの報道がベルギーだったらどうなるのかひとりシミュレーションしてみました。

1. 事故で会社幹部が登場するかしないか。


 まず、12月11日に発生した台車亀裂については、JRの車体整備と走行区間をまたぐ際の車掌交代時の伝達という、JR車内の問題になります。もし私が該当する電車の乗客だったとして、名古屋の手前で降りていたら何も知らず何の影響もなく目的地まで着いていたことになるのかもしれません。
約1週間前の機材故障に関し、ベルギーならテレビニュースで公表するのかどうかが考えものです。また、1週間で技術的問題、運用上の問題、防止策をまとめて記者会見で副社長が謝罪するというステップを踏んでいますが、ベルギーだとどうなるんでしょうか。

先月ベルギーでは線路上での事故がありました。

仏語圏ベルギーでは11月27日、鉄道と自動車の接触事故で路線が麻痺したというニュースを19時半のトップニュースでテレビ中継をしていました。記者の後ろでは暗い線路で線路復旧作業をしているインフラベル社の技術者が映っていました。20時過ぎのテレビニュースの終わりの方で同じ現場から新たなニュースのテレビ中継がありました。別の機関車で事故被害車両2両がレッカーしていたのですが、そのうち激しく破損した車両の方が外れ幽霊電車となって暗闇の中下り坂を静かに自走してしまい、鉄道復旧中の技術者を直撃したという事故を報じていました。その事故で複数の技術者が死亡しました。
翌日は事故のニュースが引き続き、数日後は有志が現場で黙祷を捧げる報道ががなされました。12月6日のニュース「La responsabilité de la SNCB engagée dans l’accident de Morlanwelz」では、SNCBが幽霊列車として切り離されないような万全の予防措置をとっていなかった可能性がある、破損した車両をレッカーする際ブレーキ機能が当該車両に設置されなかった可能性があると書かれています。
このような状況で、SNCB、インフラベル両社からは、事件の捜査中でもありノーコメントとの回答があったそうです。また、SNCBとインフラベル社双方のCEOは、連邦議会のインフラストラクチャー委員会から招請を否認しています。

ベルギーの事故は死傷者が出て検察が入っているという点で今回の日本のニュース(人的被害は無かった)とは違っていますが、約1週間後、鉄道会社は何もコメントをしていません。
日本も死傷者が出る事故の時に、1週間後でも会社の幹部が見解を示さないことが許されるのか。。。国鉄時代だったら「捜査中なのでコメントできない」といっていたのか。
幹部のメディアの登場の仕方の違いに気づきました。

2.ベルギーでは、乗客のことは日本ほど報じることができない。


次に、乗客の飼い犬がケージから出て電車の遅延が発生した日本のニュースは、乗客が起こした遅延です。
このような事件をベルギーだったら報じることはほとんどないと思います。
まず、無人駅が多いからです。ブリュッセルのメインの北駅、中央駅、南駅だと有人窓口もあるので駅員はいますが、各ホームにはいません。いたとしても乗務員として電車を待っている職員が多いです。私が乗る駅には駅舎はあるものの廃墟のようで、職員はいません。途中の停車駅も前述した駅以外に職員はいないです。朝の最寄り駅は、数十人はまっていますので、乗降客は無いわけではありませんが2013年から無人駅になりました。
このような状況で、ホームで乗客がどうなろうとも、報道に結びつくようなニュースにはなかなかつながりません。
タリスやユーロスターなどの国際間高速鉄道は当該国各国の鉄道企業の共同運営になりますから、SNCBオンリーってわけじゃありません。ブリュッセル南駅の国際鉄道発着ゾーンで犬が逃げ出しても、すべての高速鉄道はブリュッセル南駅がターミナルなのでゆっくり到着する車両のみで、よって、犬が高架線上に残って迷子になったり、通過新幹線に轢かれる危険は新幹線の岡山駅よりは少ないのではと考えます。

乗客が報じられるのは、ストライキや自然災害等で電車が遅延した時の愚痴や、夏の海岸行きの電車で渋滞を避け快適に海を楽めることを紹介する時などでしょうか。大惨事にならない限り、乗客が引き起こした出来事はなかなか報じられないです。

3.ついでに。SNCB遅延原因の一つの経験をメモします。


毎朝同じ時刻の電車でも連結車両の数が違ったりしています。パターンとして、3種類の長さがある気がします。
長さが違う上、車両の停止線が決まっているのかいないのか、毎回どこに最後尾が停まるのかわかりません。駅のホームへの入口は電車の最後尾側にあり、多くの人は後ろ寄りに待っています。
RERという高速鉄道建設計画を進めているためなのか(開業予定がかなり遅れています)、ホームはかなり長いです(グーグルマップで測ると250mくらいです)。

今回は、長めの車両で、停止したのはかなり先の方でしたので、後ろの方で待っていたお客さんは最初のドアに向け移動しだしました。これはたまにあることなので慣れています。
最後尾の電車の出入り口に着いて、車内には降車客がドアが開くのを待っています。しかし、ドアを開くためのボタンを車内・車外から押しても開きません。よって、ホームの乗客は電車に沿って前の方に向かい移動します。車内の降車客も同様に前方車両に移動します。
ドアを3つくらいパスしてからでしょうか、やっと開くドアを見つけました。そこからは降車客が延々と降りてきます。そのため乗りにくいのでまた前方に移動します。
その間に車掌は笛を鳴らし発車を告げます。

こうしてやっと乗れました。そして遅延が続きます。
車内では、「○○駅では、後ろの3両のドアが開きません。△△駅では、後ろの2両のドアが開きません。」とフランス語とオランダ語での放送が流れます。これらの駅はホームが短いため、最後尾の車両の前にホームが来ないためこのようなことになります。

SNCBのアプリは鉄道・トラム・地下鉄・バスを交えた乗り換え案内をドアツードアでしてくれ、鉄道の遅延情報もリアルタイムで伝えてくれるので便利なのですが、3駅手前で5分遅延だとしても、乗車駅では遅延は改善される前提で予測計算して1分遅延というような表示をします。でも、今回の電車のように乗客をホームで移動させてしまえば、遅延は改善されるどころか悪化します。

大学の時は鉄道が最も早かったので遅れても待っていましたが、仕事になったら鉄道が時間通りに動けば一番早く、5分遅れるならバスやトラムの方が早く着くので、毎朝どの交通機関を使ったらいいのかを携帯を見ながら悩んでいます。