求人見つける
9月に「ブリュッセル版「ハローワーク」に登録してみた」でお伝えした通り、学業優先だけど何か仕事があればなあという気持ちでいました。1か月ほど前、旦那から日本語ネイティブで今までの私の経験に大体マッチした求人情報を教えてもらいました。履歴書を送って人事担当と仕事内容などの話をしたら、採用に至った訳です。学生バイトの選択肢もいただきましたが、最低週2日という条件が合わず、フルタイムの仕事を選びました。
それまで時々ベルギー版ハローワークで「japan」とか「japonais(日本の)」といったキーワードを用いて求人検索をかけていて、寿司料理人、日本に店舗もあると謳うファッションチェーンの販売員、室内ブラインドの一種を「japonais」と呼ぶインテリアショップのテクニシャンが引っかかっていました。
今まで事務系の仕事をしてきた私にとっては、この分野の技能は全くの素人、なかなかいい求人にはめぐり合わないものだと気づいていました。
言い訳になるかもしれませんが、大学でもどうしたらいいのか困りつつありました。
2年生になると、オランダ語を除くすべての科目でグループ課題が出され、授業以外の作業が出てきました。「大学、やることいっぱいいっぱい。」で書いたこと以外にも、中間レポートやら英語の翌週までのグループ課題など、矢継ぎ早に出ていました。講義の予習・復習をするよりも、課題のために観察に出かける、ミーティングをする(対面に加え、メッセンジャーやGoogleドキュメントのオンラインでも行われます)といった講義以外の作業が加わり、何に手をつけたらいいのか見失いそうになりました。
悩み1 今年度の大学運営変更で、授業がやりにくい
それから、今年度大学は他の大学と合併したことなどから制度変更が多く、それに伴う迷いも出ました。
カリキュラム変更で科目数が減って、去年あった講義がほとんどなくなりました。先生方も去年のシラバスを使えず、年度初めからシラバスがあった科目は(前年度から継続している)意味論だけでした。年度が始まってから追われるように講義内容が作られていく印象がありました。
講義内容の一新で、観察やアンケートなどの社会学方法論の授業は今年に限り2・3年生両方が必修となりました。予定した教室に入りきらないほどの学生があふれ、履修者全員がグループレポートを提出するので、先生方は過去の類似のグループレポートよりもグループ人数を増やし、課題の条件を簡素化させて対応せざるを得ませんでした。3年生のフィールドワーク(観察)の授業は、前年にも似た授業とレポートを行ったようです。他方2年生は本来先に学ぶべき社会学方法基礎論は後期にあり、まずはフィールドワークをするそうで、同じ教室にレベルの違う学生が混在している中で授業をする先生も苦労されていました。
シラバスの購入方法も変わりました。前年度まではテキスト・シラバス販売所で並び、学生カードの代わりとなるバーコードを提示して買えました(学生証は入学登録を済ませてから数週間後に郵送なので、10月後半に届きました。)。今年度からはインターネット上でシラバスの注文・支払いまで行い、納品メールが届いたらテキスト・シラバス販売所に並んで受け取ります。3冊同時に支払っても、1冊ずつメールが届いていました。なお、市販されている教科書は前年度と同じように買えます。学生カード代わりのバーコードはイントラネット上でPDFでダウンロードできますが、今年はパソコン画面に表示させたバーコードは不可でした。そんなことは購入方法に書いていなかったので、何度も販売所に並びました。それから、英語のシラバスは別学部のものを注文してしまい、返品不可とのことで、購入しなおしました。これでまた5日程かかりました。
イントラネットも合併先大学のシステムに変更となり、大学院生や他の大学からの履修学生はなかなかそのシステムに登録されなかったようで、シラバスや講義のパワーポイントをダウンロードできない学生が出てきました。先生がとっさの手段としてGoogle Driveのフォルダで教材を共有していました。
悩み2 大学、仕事、どっち?
そんな中、大学を終えるまで頑張るか、今回の求人をチャンスとして獲得するかで短期間熟考しました。
学生として勉強していると、家族とのだんらんをこの数年我慢して卒業することが優先、その後だんらんすればいいという気持ちがありました。これは逆に言うと、寝ているとき以外大学を優先してしまう自分がいました。
また、ベルギーの学費は日本に比べたらはるかに安いですが、機会費用を考えると学生してる私は本来働いていたら稼げる給料相当の高額な対価を払っているという論理も頭の中にありました。
ベルギーの高等教育機関の資格を持って、医師や教師といった「師・士」業を興したいという目的でもありません。
そんな中で、悩みました。
仕事を選んだ。
それで出した結論は、仕事にシフトすることです。海外で修士を取得してその国に移住したかつての同僚に相談したら、とても大切なことに気づかされました。
家族との時間、特に子供の成長を見守る時期は、今逃すと戻ってきませんが、大学は戻る気があればいつでも戻れるということです。
大学なり自分の学びたいという意欲は、子供が独立した後、年金生活になったときにスタートしても遅くありません。それに、定年で働けなくなった時に学問に戻ったら、機会費用は今よりもはるかに安くなります。
それに、子供の興味のある分野の学校に通わせてあげたいし、その時にお金がないから何とかしなさいと突き放すことは少なくしたいという気持ちもあります。
大学に行ったことは有意義と思った。
こうやって仕事を選んだのですが、大学に通ったことは全く無駄ではありませんでした。
初めて日本社会ではないところ、そして世代も違う世界を直接見ることができましたし、フランス語、西洋、ヨーロッパのものの考え方を学べました。日本でも全く習ったことのない法学や哲学にも触れることができました。
ベルギーに到着した直後は、滞在許可手続きをしなければなりませんでしたので、すぐに職を探すことは不可能でしたし(就職活動が法的に可能になったのは半年くらいかかりました)、学費の面から言っても語学学校より安価で中身の濃いフランス語を学びました。そうだ、フランス語だけでなく英語もオランダ語も習いましたよ(オランダ語会話はゼロですが、文字を見たら中身を想像できるようになりました)。
そして、日本語からだけでなくフランス語や英語からも情報を得られるようになって、社会をより多角的に見ることが楽しくなりました。
そうそう、求人は英語で書いてあったので、英語で履歴書とカバーレターも一人で作れたよ。それも大学のおかげかも。
さいごに
個人的には大学を卒業したかったのに途中だということは、汚点とも思いました。でも、家族も含めてみんなからおめでとうと言われて、素直にうれしくなりました。誰からも批判的なことを言われなかったのが驚きでもありました。もしかしたら陰で誰かが言っているかもしれませんが、そんなことは気にしなくていいやと割り切ることができました。倫理で習った「自由」(先生は4つあると紹介しました)を自分の意思で獲得していると実感し、自由のありがたみをかみしめました。
仕事をするようになっても、ベルギーの事情に関するブログは続けます。