ベルギーの治安を通じ、ネット上に書くということの難しさを考えた


私のブログ編集方針には、「ベルギーは人種・言語・政治体制などがとても複雑で、一人の視点からベルギー全てを語ることは不可能なので、話題の対象を明確にして、ベルギーの一部を紹介することに主眼を置く。」と書きました。

 海外の観光や移住に関する記事を海外在住ライターが紹介しているウェブサイトがいくつかありますが、たまたまネットで見た記事に、驚きと違和感を感じました。


記事を書いたライターさんの表現の自由や、各自の情報をもとに記事を書くという行為について否定するつもりはありません。ただ、この記事を読んだベルギー在住の日本人の少なくとも一人が、記事を書くということの重さについて考えさせられたのです。客観性をどこまで持たせるべきなのか、住んで良いのはフランダース、悪いのはワロンという構図を強調していいのか。
私見ではありますが、違和感を綴ってみます。

  

2010年に541日間無政府状態が続いたのは、世界記録になっていますが地方自治が進んでいるので反政府勢力に選挙による暴動も無く政情は今でも安定しています。


 無政府状態になったのは連邦政府です。連邦政府と地方自治体の行政管轄は違います。外交・防衛などの連邦政府の管轄業務は、地方自治体が進んでいるからといって関与できる業務ではありません。地方自治が進むことと連邦政府が無政府状態なのに暴動がないということの間に直接的な因果関係はないと考えます。
 ベルギーの「無政府状態」はイメージつきにくいのですが、実は無政府状態でも連邦政府の最低限の行政は行われていましたし、大臣もいました。ベルギーでの「無政府状態」は、総選挙での体制判明から国王による首相・大臣認証までの過程に時間がかかるために起きました。
  日本では、一般的に総選挙後から衆参両院による内閣総理大臣指名選挙、組閣、天皇陛下による認証が比較的スピーディ(数日中)に行われますし、実際総選挙後の第一党党首が次期首相だと想像がついてしまいます。
  しかし、ベルギーは選挙の第一党党首が首相という構図に必ずしもなっていません。事実、現在のミシェル首相の政党MR(ワロン系自由党)は、代議員(下院)では150議席中20議席で4党からなる連立与党内で第2位、最大野党PS(ワロン系社会党)の23議席よりも少ないのです。なぜなら、ベルギーでは連邦議会選挙態勢判明後、どの党で連立与党を組むのか、連立与党の誰が首相・連邦大臣になるかを連立与党幹部の交渉で決めるからです。その決定に1年以上かかったのです。

フランダースについては日本で言う港区や渋谷区等の富裕層の住むエリア程の意識や治安であると認識していただいて間違いありません。

 フランダース地域の面積は13,522 km²(ベルギー全体の44%)で人口は650万人(同57%)、長野県の面積(13,561km²)で千葉県の人口(622万人)ほどです。この範囲全体の住民の意識・治安を東京の区の富裕層居住区域の治安であると認識して間違いないというのはどうやって把握したのでしょうか。
 富裕層は警備会社に委託して彼らの不動産・財産を守る対策を取るとも考えましたし、警備をしなくても犯罪はないとも捉えられないでしょうか。東京の富裕層の治安って、人によってイメージが変わって来る表現です。邸宅への泥棒だってあります。

実際に訪れていただければ分かりますが古城やヨーロッパらしい建築物や美しい街並みを楽しめるのはフランダースのエリアでワローニャ地域となると、工事の途中になった家や道路が長期に渡り放置されていたり街全体がややほこりや泥っぽいなと感じます。

 「アルデンヌの古城」はワロン地域にあります。私のパソコンでは、「ベルギー 古城」と検索したらワロン地域の古城が多く出てきました。
 インフラや都市開発は地域政府(フランドル、ワロン、ブリュッセル首都圏の3政府別)が所管であり、ワロン地域とフランドル地域のインフラの違いの存在は否定しませんが、素晴らしい・美しいのはフランダース、ほこりや泥っぽい扱いはワロンでベルギーを表現するというのはいかがなものかと感じました。

働かなくても年間50億EUROの資金援助を貰え生活保障を受けられているワローニャの人達は住むに困る事も無ければ食べ物にも困りません。

ワロン地域の住民は働いていないような構図を単純化した表現ではないでしょうか。失業率15%は雇用率85%とも言えます。働いていないのでしょうか?

ベルギー人が住んでいるエリアで生活するのであれば落とした財布は持ち主の元へ戻り、家に鍵をかけずに外出しても空き巣の心配もほぼないのが現状です。

ベルギー人とはどのような定義なのでしょうか。
ベルギー国籍というのであれば、皮膚の色や服装では判断できません。ベルギーサッカーのナショナルチームを見たら、さまざまな皮膚の色の選手が集まっていることがわかります。また、外国人として住んだ後、申請をして条件を満たせばベルギー国籍を取得する人だっているわけです。
財布を落としたら戻ってくる、空き巣にはいられなかったのはラッキーであり、心配はほぼないと私なら言えないと思いました。

改札口を飛び越え駅構内に侵入する外国人が多数います。

と言うのもベルギーのイスラム系住民の人口は現在少なくとも65万人と言われその多くがブリュッセルの一部地域に住み失業率50%と言われる場所でゲットーの様になっています。

駅構内で不正をしている人の国籍は外見ではわからないのがベルギーです。「不正をするのは外国人」であることを、その当事者に聞かないでどうやってわかるのでしょうか。多民族の国では、外見では簡単に外国人と決めつけられないのです。
また、この表現ぶりでは、ベルギーのイスラム系住民が不正をするという偏見をぬぐえません。

しかし、車社会のベルギーで電車やバスを利用する人と言うのは学生又は貧困層か観光客となります。

確かにベルギーの交通機関の不便さに対する不満は私もあります。ただ、ブリュッセル圏内では、交通機関を利用する通勤客もいます。パークアンドライドをする電車利用者もいるでしょう。首都圏に向かう通勤客は貧困層なのでしょうか。

細心の注意を払っても盗難や強盗などの犯罪事件に巻き込まれた場合には地元警察も十分に信用できますが在ベルギー日本大使館にも必ず援助を求めましょう。

在ベルギー日本大使館の「ようこそベルギーへ ~安全な旅を続けるために~」というリーフレットでは、パスポートを旅行中に紛失してすぐ帰国したいときの「帰国のための渡航書」という書類を日本大使館が発行する際に、「警察発行の盗難・紛失届証明書」が必要と書いてあります。
「地元警察も十分に信用できますが、大使館に援助を求める」とありますが、現地での事件は現地警察の関与がない限り、事件とみなされません。金銭の供与や警察への被害届提出代行業はできないと「海外で困ったら 大使館・総領事館のできること」という外務省が発行しているリーフレットに書いてあります。地元警察に届け出るのは当事者になります。