投票する身ではありませんが、ベルギーで子供を育てている上で教育関連政策について各党の考えを訳しながら理解しようと思って、いくつかのワロン・フランス語系政党のマニフェストを訳し始めました。
フランス語圏3政党のマニフェスト
フランス語圏の政党を全部訳してみるぞ!!と意気込んでみたものの、あまりにも長くて挫折、主要な3つの政党のマニフェストを訳すにとどめました。
それぞれのマニフェスト訳の部分にも記載しましたが、これらの訳は個人的なメモとして作っています。間違えていることもあるでしょうし、面倒なところは飛ばしていることもありますのでご了承ください。
MRは、連邦政府とワロン地域政府で与党、ブリュッセル首都圏地域とフランス語共同体政府では野党の立場。連邦政府与党の唯一のフランス語圏政党で、シャルル・ミシェル首相の出身政党です。選挙前の議席数は、連邦政府で20、ブリュッセル地域政府で15。
MRと言えば、ミシェル首相が発する「Job」の印象があります。自由党系で企業と連携し雇用創出に力を入れているというイメージです。その一環として、企業の人材にかなう教育とか、企業と連携した授業とか、企業というキーワードが良く出るのが特徴です。
MR(Mouvement Réformateur 改革運動 )の教育関連マニフェスト概要
PSは、連邦政府とワロン地域政府で野党、ブリュッセル首都圏地域とフランス語共同体政府では与党の立場と、MRとかぶりません。選挙前議席数は連邦政府で23(ベルギー全体の政党第2位、フランス語系政党で1位)、ブリュッセル地域政府で22(政党別第1位)と、議席数から言えばMRよりも強い勢力を持っていました。
憲法上フランス語圏とオランダ語圏出身双方からなる閣僚を任命する、つまりオランダ語系政党とフランス語系政党の連立政権を作らないと組閣できません。前回の組閣では、与党連立交渉の時にオランダ語圏の政党から「フランス語系社会党とは絶対連立しない」と拒否られたため野党に回っていました。数では多いのに野党という立場でした。
ベルギーで教育を管轄するフランス語共同体政府で、改選前は高等教育・社会地位向上教育・研究・メディア担当大臣の出身党でした。
マニフェストを読んでみて、「わが社会党は、」「社会主義の実現に向け」「不平等」「解放」といったキーワードが出てきて、社会学で習ったピエール・ブルデューの授業を受けているような感じでした。ベルギーの義務教育をすべて公立学校が施すという流れを支持しています。
PS(Parti Socialiste 社会党)の教育関連マニフェスト概要
cdHは、ワロン地域政府・ブリュッセル首都圏政府・フランス語共同体政府で与党でした。選挙前議席数は連邦政府で18(ベルギー全体の政党第4位、フランス語系政党で3位)、ブリュッセル地域政府で8(政党別第4位)でした。
フランス語共同体政府で、改選前は高等教育を除く教育担当大臣、日本で言う高校以下の教育関連の大臣職を得ていました。
そのため、義務教育に関する政策を維持することに主眼を置く内容だという印象がありました。素晴らしい教育のための協定Pacte pour un Enseignement d’excellenceの詳細をマニフェストに含め、これを維持していくという意気込みが主流です。
cdH(Centre démocrate humaniste 民主人道中道)のマニフェスト概要
ベルギーフランス語圏の教育政策のポイント
義務教育では、晴らしい教育のための協定にある学際的教育科目(tronc commun)によって、3~15歳の教育内容がより共通化・学際的になっています。小学校から第二言語(フランス語以外の言語、多くはオランダ語を意味する)の授業を義務化し、義務教育が終わるまでにもう一つの言語を習得できるようにとあります。修学開始年齢も低年齢化の方針が見られました。ただしMRは現在の学際的教育科目案より1年短い中学二年までにするべきとの見解があります。教育の中で、いじめに関する教育の充実と言う政策が各党にありました。今はいじめもソーシャルメディアなどを使ったものもあり、SNSの使い方を教育の場で実施するという政策がいくつか見られました。
今は勉強に加えてITやソーシャルメディアと言った私たちの時代には考えもしなかったことを学校で教えることになるのですから、現代の子は学ぶことが多くなって大変ですね。
日本の教育制度と違うところ
ベルギーの憲法は?
ベルギーの憲法では教育の自由と親(parentsなので両親)が学校を選ぶ自由と公教育での宗教・道徳教育選択の義務が第24条第1項でで規定されています。第3項では教育での自由と基本的権利の尊重と義務教育が終了するまでは教育へのアクセスは無料となっています。日本の憲法と比べて文章が教育に関する条文が長めですが、その中には教育を担当する連邦構成政府、つまり言語共同体の役割について書いています。 la communautéは、コミュニティと訳すのではなく、オランダ語・フランス語・ドイツ語の各言語「共同体政府」を意味しています。
loiやdécretと言う単語はフランスのフランス語と少し意味が違います。そのことについては、大学1年の授業(11)「法学 Droit」で習ったことで紹介しています。
法学の授業では、憲法に教育の規定を掲げたのは、最低限ベルギー全土で共有すべき内容を憲法と連邦政府の法律で規定することで、言語圏の間で義務教育期間が違ったりすることがないようにしたと習いました(と理解しています)。
→ベルギー 憲法(フランス語) http://www.senate.be/doc/const_fr.html
Art. 24
§ 1er. L'enseignement est libre; toute mesure préventive est interdite; la répression des délits n'est réglée que par la loi ou le décret.
La communauté assure le libre choix des parents.
La communauté organise un enseignement qui est neutre. La neutralité implique notamment le respect des conceptions philosophiques, idéologiques ou religieuses des parents et des élèves.
Les écoles organisées par les pouvoirs publics offrent, jusqu'à la fin de l'obligation scolaire, le choix entre l'enseignement d'une des religions reconnues et celui de la morale non confessionnelle.
§ 2. Si une communauté, en tant que pouvoir organisateur, veut déléguer des compétences à un ou plusieurs organes autonomes, elle ne le pourra que par décret adopté à la majorité des deux tiers des suffrages exprimés.
§ 3. Chacun a droit à l'enseignement dans le respect des libertés et droits fondamentaux. L'accès à l'enseignement est gratuit jusqu'à la fin de l'obligation scolaire.
Tous les élèves soumis à l'obligation scolaire ont droit, à charge de la communauté, à une éducation morale ou religieuse.
§ 4. Tous les élèves ou étudiants, parents, membres du personnel et établissements d'enseignement sont égaux devant la loi ou le décret. La loi et le décret prennent en compte les différences objectives, notamment les caractéristiques propres à chaque pouvoir organisateur, qui justifient un traitement approprié.
§ 5. L'organisation, la reconnaissance ou le subventionnement de l'enseignement par la communauté sont réglés par la loi ou le décret.
実際どんな違いがある?
私にとって教育での一番の違いは、最寄りの学校に行く必要がないことです。日本の田舎ですと、学区があって、生まれた住所で小学校と中学校は決まってしまいます。ベルギーは小学校から校風を見て学校を決められます。最寄りの学校に行く必要がありません。これが両親が学校を選ぶ自由の意味です。
教育の自由については、ベルギー建国当初から存在したカトリック系と自由系の学校の共存をどうするかという問題がありました。その後オランダ語系住民の地位向上運動も出てきて、単に学区で切って、あなたの子はここに住んでるからこの学校に行きなさいと強制できない環境がずっとついて回っているのです。
うちのアパートには、オランダ語系の家族はオランダ語系の小学校にバスで通っています。キリスト教系がいいとか、公立がいいとか、宗教はどうでもいいけど教育方法がいいとか、親の使用言語じゃない方の学校に入れてバイリンガルにしようといったような選択の自由が子供ではなく親に保障されています。
小学校・中学校では入試は無くても、何となくこの学校はいい・悪いという評価を下す人が少なからずいます。そのため人気の学校は定員にすぐ達してしまい、親の学校選択の自由が狭められるということになるので、定員割れをしそうな学校の魅力を高める政策、人口増加地域の定員アップ政策をダブルで実施する必要があります。
また、日本のような私立は高額ということも義務教育ではほとんどありません。教師の給与などの必須部分はどの学校でも無料だからです。
日本だと教育指導要領や入試のために、どの学校に入っても学習範囲は大体同じです。ベルギーフランス語圏だと小学校卒業や中等教育の2年ごとの政府が課す進級試験がありますが、特に中学では学習指導要領に基づいて教えなさいとということはなさそうです。少なくともうちの子の学校では教科書を使いませんので、教科書通りにやりなさいと政府から強制されていないと言えます。
結構調べて書いて着かれちゃいましたので、今日はこの辺で。
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