5月26日、ベルギーの選挙。PS(Parti Socialiste 社会党)の教育関連マニフェスト。


この訳は、個人的なメモとして作っています。間違えていることもあるでしょうし、面倒なところは飛ばしていることもありますのでご了承ください。

PSは、「170の公約」として、PDFで120ページのマニフェストを掲げました。
 

参照ウェブサイト:http://www.170engagements.ps.be/s/170-engagements-3.pdf


29.   将来の学校に向けた新しい最終目的:獲得知識の平等、解放、開かれ積極的に参加する学校。学校システムにより再生産される不平等に対し、機会均等、獲得知識の平等、子供の個人的解放を教育の中で求める。


30.   子供ひとりひとりにとって質の良い教育現場・施設の確保。現在及び将来の人口に対応していない地域を優先に確保。現代になじまない、または人口減少のある地域の教育施設には新たな教育計画を付す。

31.   教育無償化。憲法第24条の教育無償の原則あり。公的資金の介入により、学校が保護者に経費(:昼食時の学童代)を請求することを禁止する。学用品に関し、学校は再利用ネットワークやグループ購入の制度を導入させ、学費コストを減少させる。給食も栄養と地元産品を利用する。美術館・図書館・文化施設へ生徒として入場する際の料金を無料にする。政府として責任を持って実施するため、各種アクターの協力を求めていく。

32.   貧困・機会不平等に立ち向かう場所としての学校と、その再生産。学校は知識を伝える場所だけではない。健康(健康診断、性教育)、バランスのとれた栄養、文化・スポーツ活動(校内での無料の部活動)、テクノロジー(IT機器の無償利用)、不平等に対する教育を行う。子供向け各種サービスが散在されているため、集約したワンストップサービス窓口を創設し、学校にサービスを集約する。宿題制限法の順守が重要で、学校での宿題サポートを支援する。

33.   3歳からの義務教育。貧困やフランス語を習得していない層の子供の就学開始が遅い調査あり。早期義務教育化は不平等や社会決定論への対策となる。そのためのインフラ・人的対策をとる。

34.   自宅学習のフォローアップ強化。ワロン・ブリュッセル地域政府(FWB)が自宅学習の法的枠組みとフォローアップ強化を確保する。

35.   基礎教育強化。FWBOECD加盟諸国平均よりも幼児教育に関する支出が少ないので、不平等対策として予算増をする。

36.   学際的共通科目(Tronc commun pluridisciplinaire)の創設。不平等の発生は、留年、普通科から落ちた生徒を若いうちから技術・職業学校に送ることなど、生徒を選別することにあり、FWBは強制的進路決定のトップクラスに位置している。ついては、社会決定論に対抗する政策として社会新共通科目を創設する。幼児教育から中等3年までの間、多様な分野の内容で、選択科目は極力制限する。共通科目修学後は、生徒自身が学習分野を選択する。

37.   2言語の習得と共通科目終了時の第3言語の習得。小さい頃からの外国語学習は最善の方法であり、世界の芽を培うことにつながる。言語教育は学校教育内で促進されるべきである。最低でも小3で言語教育を開始させる。

38.   特別支援教育保護。特別支援教育を必要とする子供が、支援学校、または普通学校内で同化プロセスで行われるようにする。

39.   学習支援が必要な子供の普通学校での教育強化。学習支援が必要な子供も普通学校で学べる体制をつくる。普通学校で画一の教育プログラムについていけない子供をすぐに特別支援学校に送り除外することを今日でも行われている。特別支援が必要な子供のニーズにあった教育を実施する。子供を除外するのではなく取り込む教育をとれるよう普通学校と特別支援学校の連携を図る。

40.   ERASMUSに参加するための中等教育支援向上。ERASMUS制度を利用し仏語圏大学生が多数留学し、その効果が見えている。恵まれない層の大学生にも留学への簡便なアクセスを可能にするべきである。中等教育・職業教育レベルのプログラムも存在するが、大学ほど成功していない。このレベルでの留学を希望する生徒への参加を促すため、手当を確保する。

41.   学校ドロップアウトや留年回避のための学生支援。FWBでは、15歳までに約半分の子供が留年し、経済的負担もかかる。FWBの留年問題は不平等を多く生じさせる。ついていけない子供に先生が付く、無料の学習サポートなど、失読症・統合運動障害・失語症など、学校に困難を抱える子供の支援措置を講じる。

42.   1クラス当たりの学生数制限。1クラス当たり15人に制限。

43.   ハイレベルで職業展望を提供する教育。学際的共通課程後に資格化(qualifiant)系か普通科系を自ら選択する。高等教育につながる補講に合格した者は、直接大学に進学できるよう、資格化系を充実させる。技術(technique)系と労働(professionnel)科系という分け方を廃止する。社会地位向上教育を1年間資格化系に一律提供し、早期に就職したい生徒には夜間授業を提供する。

44.   成人や雇用者向けの教育提供。成人向け教育の充実、Eラーニングを使った通信教育、ビデオカンファレンスを用いた労働、オンラインレッスン、自動学習の場を提供する。これらの教師は遠距離教育用の研修を受ける。企業内で学習休暇が取得できるようにする。

45.   教育機関と地域の関係再考。義務教育の組織と規則を再考する。

46.   公教育の強化。教育の質の平等を図るため、長期的には行政による公教育に一本化されるのを目指す。まずは公教育の提供強化を保護し、あらゆる分野の教育の提供を公教育で保障する。学際的共通科目の点では、そのノウハウや必要なインフラを公教育が優先的に享受できるようにする。アクティブラーニングの方法を公教育の学校間協力に取り入れる。

47.   FWBの教育組織再編。公教育に向けたFWB教育組織担当機関の設置を検討する。

48.   新教育方法の開始と小学校からの対メディア教育。デジタル化は、Wikipediaや大衆向け無料オンライン大学授業、若い数十人ほどのIT開発者が最新の問いに答える集会などを考えてみよう。最新IT技術を利用するには、情報の信ぴょう性を確認する方法を教育する機会も同時に必要である。従前の学習方法をそっくり入れ替えることを意味するものではなく、新しい教育手段を生徒に提供しながら子供への教育を完ぺきにするためにあらゆる手段をとっていく。各学校が授業課程のなかに新しい学習方法や新技術を導入することを求めていく。新技術を習得する研修を教員に提供する。教育が社会契約や社会的存在の構築を促進するためにこれらの手段や技術が活用されるような枠組みとなるようにする。包括的な学校では、新しい教育方法(アクティブラーニング、特殊教育等)が(教師養成初期研修を含め)支持・促進される方向を目指す。また、批判的精神への目覚めや構築に向かって進むために、ソーシャルメディアを含めた新しいメディアに関する教育を若いうちから教育をする。

49.   適切な学習リズム。子供の生理的リズムに合わせた学習リズムを考慮すべきである。現在宿題やスポーツ・文化活動のすべてまたは一部を学校での活動に戻すことで、バランスを向上させる。学校の年次休暇をよりよくすることは、子供と教師に十分な休息をもたらす。

50.   教師の重視と教師研修の強化。教育システム改善のため、学際的共通科目を含めた初期研修が不可欠条件である。子供の留年を回避する手段も教員に研修させるべきである。あらゆる社会の変化に応じた研修が必要。初期研修に必要なものとして、落ちこぼれ対策、子供の学習トラブルを察知する方法、特殊教育を実施する能力開発などなどがある。さらに、包括・平等・団結のある社会を促進するため、差別行動に関する研修が必要だ。継続的研修として、新教育方法(グループ課題の管理、インタラクティブ黒板やタブレット利用法などなど)。教師になっている人に向け、修士課程へのアクセスも組織化する。将来の教員養成(に加え国語(フランス語)、算数の教授法)は、教員養成課程の5年への延長以外にあり得ない。体制上の大切な役割を果たす教師への給与の引き上げが肝心である。

51.   施設の質への投資が不可欠。教材、多人数クラス、換気トラブル、学習に不適の教室への投資が必要。

52.   教師の労働環境改正。教員に私的・仕事空間を分ける方法を与える。若い教師の負担が大きいことに対し、アシスタントまたはメンターシップの制度を取る。先輩教師の負担が減りその時間を若い教師のサポートに使うことができる。最後に、学際的教育チームを結成し、教師としての仕事を孤独なものだと思うことを減らし、そして社会の求めに応じていくことになる。

 

PS 高等教育及び研究

85.   高等教育へのアクセス拡大。学習分野へ入学する条件を付けることに反対、入学試験導入反対。奨学生の条件拡大。CPASCentre public d’action sociale 公的社会福祉センター)受給対象家族の学生への経済的支援窓口の一元化。ブリュッセルとワロン地域の学生住居問題に対する支援継続、住居の確保強化・拡大、学生住居管理の公的機関創設。高等教育の「文化の壁」の撤廃。

86.   必要に応じた高等教育への公的資金注入。2016年の1.07億ユーロの追加予算投入は、高等教育が直面する問題のすべてに対応していない。フランス語共同体政府の高等教育機関に対する給付金はGDPや学生数の増加比から切り離されている。これに対する政策として、閉鎖的な予算確保の撤廃、予算に恵まれない高等教育機関の高等教育提供を促進支援。予算不足機関に特に配慮しながら高等教育機関に直接予算配分見直し。間接予算配分の解決策を検討。

87.   中等教育から高等教育へのスムーズな進学。オリエンテーションの問題が高等教育でのドロップアウトの大きな要因の一つにある。どんな学問分野か、希望分野で必要とされる学習内容、どんな就職につながるかといった構造化された情報提供を中等教育(高校相当レベル)と高等教育機関の間で実施する。

88.   提供する教育と機関相互で協力向上のための高等教育機関アクター間連携。高等教育間での協力や共同学位取得が促進されている。ARESAcadémie de Recherche et d'Enseignement Supérieur、研究・高等教育アカデミー。2014年に設置され、FWB域内の142の高等教育機関が加盟)の目的の一つに高等教育機関間の連携・議論し将来の高等教育像を構築するものである。

89.   学生の社会的役割向上。フランスでは高等教育課程内で学生がボランティア活動などの社会参画を活用することができる。同様の課程の導入を提供する。

90.   生涯学習メカニズムと経験獲得向上の強化。高等教育機関でここ数年成人を対象にした生涯学習の機会を提供し、高等教育に触れる・完了するというセカンドチャンスとなっている。職業能力向上を希望する労働者に対して高等教育へアクセスしやすい背策を講じる。一方で個人の職業経験から獲得された知識を向上するために大学やHaute école(オーット・エコール。高卒後に入学でき、より実践的な科目を学習する。日本の単科大学や専門学校に近いイメージ。)によって取られた措置は成果がもたらされている。だが、その候補者は学業により仕事に制限がかかる。いまだに教育現場以外で能力向上をすることにためらいがある。

91.   ヨーロッパ域内の研究活動の強化。Erasmus国際交換留学制度をはじめとした世界に目を向けることは高等教育機関の焦点である。FWBは学生の留学向け基金や奨学金があり、その金額が増えてきた。奨学金は学生の社会経済事情により累進的に供与されている。世界に目を向けた民主主義的な手法として強化していく。各学生にIT技術を使って外国の学生と交流を取ることができるよう、高等教育機関はバーチャルな国際交流を提供しなければならない。

92.   基礎及び応用研究への支援。EUは対GDP3%の研究予算を2020年までに確保するという目標を掲げている。現在ベルギーでは2.5%である。将来ベルギーは2035年までに4%2050年までに5%に達成し、うち1/3は公的機関からとなることを目標とする。基礎研究は大学間研究インフラ開発に大いに享受できるようにする。FWBでの研究チームが外国研究所とともにハイレベルの科学研究を発表できるようにする。さらに、あらゆる研究をないがしろにはしない。例えば芸術研究も公権にて十分に支援される。

93.   戦略的研究開発。産業の向上に寄与する基礎研究を大幅に発展させていく。FWBは保険分野で「Weblio」プログラムを創設している。このようなプログラムを物質科学、ナノテクノロジーなどに拡大していく。

 

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