ロックダウンの日本語は「活動制限」がベストだと思う

新型コロナウィルス(Covid19)が日常生活のニュースとなってから、「ロックダウン」という言葉が聞かれるようになりました。私なりのCovid渦のロックダウンの意味について調べてみました。

英語のlockdown

Weblio英和辞典・和英辞典でのlockdownは、下のようになっています。

ロックダウン(英語: lockdown)は、緊急事態により、建物やエリアへの出入りが自由にできない状況をいう。

(囚人の)厳重監禁


フランス語辞書でのconfinement

フランス語ではロックダウンとは言わずconfinement(コンフィヌモン)です。私も今年になって知った単語です。小学館ロベール仏和大辞典では、

1.閉じ込めること、閉じこもること;(囚人の)独房監置;(病人の)隔離

2.(物理)...放射性物質を封じ込めること...

3.(生物学)(部分集団の)隔離、孤立.../ ~ biologique生物学的封じ込め、~physique物理的封じ込め

4.(土木)(略)

とあり、閉じ込めること、封じ込めというのがCovid以前の対訳なんだろうなというのがわかりました。


「Lockdown」のベルギーでの使われ方

2020年10月30日のベルギー首相発コロナウィルス対策の強化に関するコミュニケを例に挙げます。第二波到来により発表されたものです。


コミュニケの内容は英語フランス語オランダ語ドイツ語で発表されています。そして、そのフランス語版を元に日本語仮訳を在ベルギー日本大使館が作成しています。

英語とオランダ語でコミュニケの最初の文章に「lockdown/ロックダウン」という表現があるので、各国語でどのように表現されているのか、以下に引用し、該当部分に下線を付けました。

(日本語)本日、連邦政府及び連邦構成体政府は、協調委員会において活動制限(confinementの強化を決定した。

(英語)  The Federal Government and the Governments of the federated entities decided today in the Consultative Committee to proceed to a stricter lockdown.

(フランス語)Le gouvernement fédéral et les gouvernements des entités fédérées ont aujourd’hui décidé en Comité de concertation de procéder à un durcissement du confinement.

(オランダ語)De federale regering en de regeringen van de deelstaten hebben vandaag in het Overlegcomité beslist om over te gaan tot een verstrengde lockdown.

(ドイツ語)Die Föderale Regierung und die Regionalregierungen haben heute im Konzertierungsausschuss eine Verschärfung der Ausgangsbeschränkungen beschlossen.


ドイツ語の知識はないのでGoogle translateを使って「ロックダウン」相当部分はAusgangsbeschränkungenだろうと判断しました。訳はExit restriction/出口の制限となっていました。フランス語訳Restrictions de sortieなら外出制限という日本語訳で馴染みます。


Covid渦でのロックダウンの日本語訳について

在ベルギー日本大使館は、フランス語経由ではありますが、ロックダウンを活動制限という言葉で補足していました。他にどんな補足表現があるか、「ロックダウン(〇〇〇〇)」という形の記事を探してみたら、次のような表現がありました。

  1. 都市封鎖
  2. 封鎖
  3. 外出禁止
  4. 外出禁止令
  5. 外出禁止措置
  6. 外出制限
  7. 活動制限令
  8. 活動制限
  9. 外出自粛措置

BBCの2020年3月21日の記事「新型コロナウイルスの大流行はいつ終わる? 生活はもとに戻るのか?」では、一つに記事で「ロックダウン (封鎖)」「ロックダウン(外出禁止)」という2つの補足表現がありました。一つの記事でもロックダウンの意味合いが違うのか、それとも校正も気づかず複数の表現が通ってしまったのかは確認していません。


Covid19でのロックダウンの日本語は「活動制限」がベストだと思う理由


コロナ渦のベルギー生活での感覚として、「活動制限」がベストだと思います。なぜベストなのか、消去法で解説します。


×都市封鎖

「スウェーデン全土のロックダウン(都市封鎖)」、「イングランド全域でロックダウン(都市封鎖)」、国全域を「都市」封鎖など、Bloombergや時事通信社などで使われています。

 時事通信では、2020年10月31日の「ベルギーも都市封鎖 コロナ感染欧州最悪、外出は容認」という記事で、文中に「全土で厳しいロックダウン(都市封鎖)を導入すると発表した。」とあります。ちょっとブリュッセルを抜ければ牛や畑が広がり、ワーテルローの戦いの場なんて、今も畑の中にモニュメントがあります。そんな場所でもロックダウンしているので、都市封鎖という訳は違和感があります。

×封鎖

ベルギーのコロナ第二波の場合、国境は開いていますが外国渡航は強く推奨しないという状態です。また、どこかの自治体への出入り制限はありません。何を封鎖するのかはっきりしないので、封鎖は違います。

×外出禁止、外出禁止令、外出禁止措置

ベルギーのコロナ第一波、第二波とも、同居人のグループとして散歩など屋外に行くことは可能です。

おかげで週末は散歩する人、サイクリングをする人を見かけますし、私たち家族も近くの森の迷路のような道を歩いています。

夜間外出禁止令は現在のロックダウンの中に含めて発動されています。これはフランス語でcouvre-feuという表現が別途あり、英語もcurfewというようですので、ロックダウンとは違います。

×外出制限

外出禁止と同様、今回のロックダウンの対策の中の一つとして外出制限はあります。テレワークが可能な場合はテレワークを義務として外出制限をかけていたりします。

ただ、今回のロックダウンは外出以外の経済的制限やマスク着用なども含められているので、ロックダウン=外出制限ではないです。

×活動制限令

インターネットで検索すると、マレーシアで Movement Control Orderという名前でコロナ関連対策を講じているため、マレーシア向けの表現です。

ベルギーのフランス語では、confinementを厳格化するとか、部分的confinementというような使われ方をニュースなどでしていて、政令などの具体名ではあまり説明がなされていません。そのため、「令」がつくのもベルギーの場合しっくりしません。

×外出自粛措置

ベルギーでは、行政の決定に基づき、マスクや集まり、不要不急の店舗の開業、夜間外出禁止などの違反者には罰金などの法的処分がなされます。その代わり経済的な制限措置に対して労働者の一時失業や休業補償制度を設けます。

法的処分があって、警察も見回り違反者に即罰金徴収なんて状態だと、自粛措置ではないです。

また、最低限の気分転換となる外出はコロナでのロックダウンが始まってからも可能です。気分次第で自粛という気分なしで散歩できます。

〇活動制限

2020年10月30日のコミュニケをみると、社会生活、経済生活、学校というテーマがあります。不要不急の店舗の閉鎖による経済の不当競争をなくすため、大型スーパーでの家電や衣類売り場を閉鎖するなど、人の物理的な移動の制限だけではなくなっています。
そのため、ロックダウンを昔からの訳のまま報道することは、日本語で情報を得る人たちに一種の誤解を生じることが懸念されます。

ベルギーだけの感覚でロックダウンは「活動制限」がベストだと個人的には考えているので、もう少し多元的に見たほうがいいかもしれません。でも国全体・州全体のロックダウンに対して「都市封鎖」ってのは、どう考えてもおかしいので、訳の仕方が変わってくれるといいなとは思います。

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