国語辞書で「政府」を引くと、狭義で「現行憲法では行政権の属する内閣または内閣とその下にある行政機関の総体」で、要は内閣、大臣です。
でも、10月にはベルギー初の女性首相、つまり内閣の長が就任したというニュースが日本でも報じられています。
このあたり、日本の公民で習う制度とは違っていて、ベルギーならではの複雑さからきていることもあり、日本の首相交代時ともリンクさせながらその違いをお伝えできればと思います。
2018年12月、ベルギー首相は国王に辞任慰留された。
2018年12月9日の内閣改造は、与党で議席数の多めのオランダ語圏政党N-VAが与党から離脱したためです。(フランス語系政党の)ベルギー首相は国王に辞任すると伝えたのですが、国王は翌年5月の総選挙まで辞任はしないよう慰留の道を首相に伝えました。
日本なら、国王に相当する天皇が総理大臣に次の選挙まで首相職を続けてほしいという意見をいうことはしません。総理大臣は国会議員により選ばれ、それを天皇が認証します。ベルギー国王は選挙権がない代わりに連邦政府の組閣に意見を伝えることが任務となっています。
そのため、N-VA出身の大臣が辞任し、議員の過半数に満たない連立政党による内閣となり、物事を決定する力が衰退しました。
2019年5月の連邦・連邦構成政府の選挙
欧州議会選挙と同じタイミングで、ベルギー連邦政府議員選挙も行われました。
日本だと政党に所属しない候補者も選挙に勝つことがありますが、ベルギーの投票用紙は政党別の候補者リストの中から選ぶので立候補者は政党に属する必要があります。
2014年と2019年の選挙時の連邦議員数がLibre Belgique紙にありました。色は各政党のイメージカラーです。
内閣、つまり閣僚名簿を作る条件は次のようなものがあります。2018年12月まではN-VA, CD&V, Open VLDというオランダ語圏政党とフランス語圏からミシェル首相出身のMRで組閣していました。
・議席数の過半数の政党グループ
・大臣のフランス語圏・オランダ語圏出身者比
・大臣の男女比
議席数の多いN-VAとPS(フランス語系社会党)は犬猿の仲。N-VAにとってオランダ語圏のカネがフランス語圏に行くのが嫌なのです。 N-VAはベルギーからオランダ語圏をより引き離そうとする考えで、PSは社会保障を手厚くしたいのでベルギーという大きい枠組みの方がありがたい。そのため、議席数が多くてもなかなか連立政権を組む気がないので、5月の選挙が終わっても延々と組閣できる政党の組み合わせができません。
https://www.lalibre.be/belgique/politique-belge/elections-2019-voici-a-quoi-ressemble-le-nouveau-parlement-federal-5ceaf2619978e223b1f0e9f1 より引用。 |
1年過ぎても内閣ができないものの、連邦政府の担当業務で新しいことを決められないというだけです。外交・防衛・連邦警察・国鉄などが連邦政府の担当です。経済・雇用・農業・水道・住居・公共事業・国鉄以外の交通機関を担当する地域政府、言語・教育・科学技術などを担当する共同体政府は5月の選挙の後しばらくしてから大臣が決まったので、これらの政治は動いています。
連邦政府ができないという状況をニュースで見ていると、はないちもんめの遊びをしているような感じがします。N-VAさんは、反対側にいるPSさんは絶対こっちにこさせないようにしようねってはなして足を蹴り上げているような、そしてPSも同じくN-VA嫌いってやってます。政治が滞るほうがベルギーにとって良いと連邦議員やその政党が選んでいる結果なのでしょうが、すでに半年過ぎても選挙の意義が何もないというコスパの悪さを実際のベルギー有権者はどう思っているのでしょうか。。。
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