12月9日、ベルギー内閣改造。ベルギーで「スウェーデン連立内閣」の終焉?




この週末、シャルル・ミシェル首相は内閣改造をせざるを得ませんでした。

ベルギー首相の記者会見生中継、2言語駆使してました」で紹介した、マラケシュで12月10日から開催される行われる国連移民関連文書に関し、オランダ語圏右派の新フラームス同盟N-VAという与党が合意せず、同党出身の閣僚が辞職したためです。

新閣僚名簿


ベルギー政府のウェブサイトで閣僚名簿「Composition et répartition des compétences du gouvernement fédéral」を12月9日に確認したところ、すでに更新されていました。
変更点をLe Soir紙「Gouvernement remanié: qui fait quoi? Voici les nouvelles compétences des ministres(改造政府:誰が何する?新閣僚の担当分野)
  • シャルル・ミシェル Charles Michel 首相 (仏語系自由党 MR)

  • クリス・ペーテルス Kris Peeters 副首相兼雇用・経済・消費者保護・対外貿易・貧困対策・雇用機会・障害者担当(蘭語系キリスト教政党 CD&V)→貧困対策・機会均等・障害者担当をスハル・デミルZuhal Demirから引き継いだ

  • アレクサンダー・デクルー Alexandre De Croo 副首相兼財務大臣、対脱税・開発協力担当(蘭語系自由党Open VLD)→ヨハン・ファンオーフェルトフェルトJohan Van Overtveldtから財務大臣を引き継いだ

  • ディディエ・ランデルスDidier Reynders 副首相兼外務・欧州関係・防衛大臣、Belirisおよび連邦文化機構担当(仏語系自由党 MR)→防衛大臣を就任して1カ月と経たなかったステフェン・ファンデピュットSteven Vandeputから引き継いだ兼務となった(注Belirisは連邦とブリュッセル首都圏地域間の合意でベルギー及びヨーロッパの首都としてのブリュッセルの交通・社会住宅・緑化・地域活性・文化・文化遺産・スポーツ分野での振興促進を目的に創設された組織)

  • ピーテル・デクレムPieter de Crem 安全・内務大臣(蘭語系キリスト教政党CD&V)→国務担当長官から新たに閣僚となった。前大臣はヤン・ヤンボンJan Janbon

  • クーン・へーンス Koen Geens 法務大臣、国有不動産管理担当(蘭語系キリスト教政党CD&V)→ヤン・ヤンボンJan Janbonから国有不動産管理担当を引き継いだ

  • マギー・デブロックMaggie De Block 社会・保健大臣、移民担当(蘭語系自由党Open VLD)→テオ・フランケンTheo Franckenから移民担当を引き継いだ

  • ダニエル・バクレーヌDaniel Bacquelaine 年金大臣(仏語系自由党 MR)

  • マリークリスティーヌ・マルゲム Marie Christine Marghemエネルギー・環境・持続可能開発大臣(仏語系自由党 MR)

  • ソフィー・ウィルメス Sophie Wilmès予算・公務員大臣兼宝くじ及び科学技術担当 (仏語系自由党 MR)→科学技術担当をスハル・デミルZuhal Demirから、公務員担当を就任して1カ月と経たなかったステフェン・ファンデピュットSteven Vandeput引き継いだ

  • フランソワ・ベロ François Bellot 運輸大臣ベルゴコントロール及びベルギー国鉄担当

  • ドゥニ・デュカルム Denis Ducarme 中産階級・自営業・中小企業・農業・社会統合大臣、大都市担当(仏語系自由党 MR)  →大都市担当をスハル・デミルZuhal Demirから引き継いだ

  • フィリップ・デバッケール Philippe De Backer デジタルアジェンダ・電気通信・郵政大臣、行政簡素化・対社会不正・私的生活保護・北海担当(蘭語系自由党Open VLD)→国務担当長官から新たに閣僚となった。対社会不正と北海担当は維持しつつ、デジタルアジェンダ・電気通信・郵政大臣をアレクサンダー・デクルーから引き継ぎ、行政簡素化はテオ・フランケンTheo Franckenから引き継いだ。

「スウェーデン連立内閣」の終焉とは?

この与党連立体制の終焉について、新聞記事ではスウェーデンというキーワードを使っていました。政治学などでスウェーデン方式というような表現があるのかと疑問になり、調べてみました。

これは、スウェーデンの国旗をベルギーの連立与党に絡めて表現した内容です。
   スウェーデン王国国旗
黄色はフランドル(蘭語圏)の旗の色でOpen VLD、CD&V、NV-A。 特にフランドル地域の自立を目指す中道右派のNV-Aのイメージカラーです。青はリベラル系の政党イメージカラーで仏語系ならMR、蘭語系はOpenVLD。
また、黄色い十字架は蘭語系キリスト教政党 CD&Vとも解釈する新聞記事もありました。
フランダースの旗

というわけで、ベルギー独自の用語だったようです。日本の政治学を学ぶ人がみな覚えるようなキーワードではなかったです。

日本だと、選挙で一番議席を獲得した政党が与党となって、その投手が総理大臣になるというのがシナリオですが、ベルギーの2014年総選挙の際、下院議席数はNV-A33、仏語系社会党PS23、仏語系自由党MR20、蘭語系キリスト教政党CD&V18、蘭語系自由党Open VLD14、でした(出典http://elections2014.belgium.be/fr/cha/seat/seat_CKR00000.html)。
一般的にいえば、最大議席を獲得したNV-Aが首相を輩出し、連立を組むというシナリオになりそうですが、NV-Aは第二党のPSとは絶対連立を組みたくなく、でも組閣条件として首相を除く閣僚の言語別同図うが規定されていたので、MRとの連立を組んだという結果でした。

つまり、この週末に変更された連立与党は、下院議席数で言えば第三党から第五党となっています。国会で議決に必要な過半数を獲得するためには閣外政党の同意が必要なので、議決にはより困難な道のりが見込まれます。

来年5月に5年ごとに行われる総選挙があるので、それほど長くないのが救われます。一方で、ベルギーは総選挙後から組閣交渉に時間がかかったというギネス記録も持っていますので、主要な政策が議決されないという時期が1年くらい続くのかもしれません。


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